いのある人は殆ど知らない。
知っているのは二人だけだ。
いずれも私がついうっかり喋ってしまったからだ。
一度ならず二度とは、私もおっちょこちょいである。
そのうち一人に話してしまった時のことである。
その人は私よりも年上の男性で宗教家である。
素晴らしい人柄は、ひと目見ただけで誰でもわかるような
穏やかさを漂わせている。
実に落ち着いた人である。
私は話の流れで自分が離色中であることを喋ってしまった。
その人は驚きを隠せないようだった。
目が点になっていた。
いろいろと尋ねられたので私は正直に答えた。
驚きはなお増したようだった。
私はこの様子を見て(言うんじゃなかった)と思った。
その日以降、私はその人から特別な目で見られるように
なってしまった。
評価のランクが何段も上がってしまったらしい。
これは私の望むところではない。
いつもの冴えない男として見てほしい。
私はこれに懲りてリアルの世界では自分が離色家であるこ
とは、一切表明しないことにした。
特別扱いは面白くない。
楽しくもない。
むしろ悪いことである。
それは長期的には人を落下させる要因となるのだ。