今年の6月、俳優のピーター・フォーク氏がお亡
くなりになった。(以下敬称略)
ピーター・フォークは、多くの映画、テレビドラマ
に名演を残している。
その中でも私の心に最も残っているのは、やは
り”刑事コロンボ”である。
刑事コロンボは、ウィリアム・リンクとリチャード・
レビンソンが1960年に書いた短編小説”DEAR
刑事コロンボは、フォークの代名詞とも言える彼
の代表作であるが、コロンボを演じたのはフォーク
が最初ではなかった。
フォークの前に二人の俳優がコロンボを演じてい
る。
刑事コロンボが初お目見えしたのは、フォーク版
コロンボよりも逆上ること8年の1960年である。
この年の7月31日の日曜日の夜、米国NBCテレ
ビの”チェヴィー・ミステリー・ショー”枠内の単発作
品として放送された。
題名はEnough Rope、原案・脚本は、ウィリアム・
リンクとリチャード・レビンソンである。
このコンビは刑事コロンボの生みの親であり、後
に大ヒットした刑事コロンボ・シリーズの多くの脚本
も書いている。
コロンボ役は、バート・フリードだった。
フリードは、”ガン・スモーク””ボナンザ””バーナビ
ー・ジョーンズ””ベン・ケーシー””ルート66””ペリ-・
メイスン””コンバット”等々多くのテレビドラマや映画に
出演している実力派俳優である。
内容は、冒頭に高名な医師が周到な計画のもとに
妻を殺害する。
そこへ刑事コロンボが登場し捜査を進めていき事
件の全容が明らかになっていく、というものである。
このパターンは、後にお馴染みになる倒叙式ミス
テリで、この時点で既に確立していたのである。
だが、この作品はフォーク版コロンボとは大きく異
なる点がある。
それは、”コロンボが主役ではない”ということであ
る。
主役は犯人である医師なのだ。
計画殺人が実行され、次第に追い詰められ破綻
していく医師の苦悩を軸に描かれていく。
コロンボは、重要な役どころではあるが、あくまでも
脇役だったのである。
この作品は、あまり注目されなかった。
バート・フリードは演技力のある名優ではあったが、
た。
つまり、あまり面白くはなかったようだ。
そして、この作品の存在は、すっかり忘れ去られ
ていった。
私が10年ほど前に購入した刑事コロンボの公式
ガイドブックにも、この作品に関する記述は載って
いなかった。
関係者にとっては消したい歴史なのであろうか?
これはそれほど、知られざるエピソードなのである。
初代コロンボを演じたバート・フリード
~続く~