ピーター・フォークが異例の主役締め出しを食ら
ってまで、自身のアイディアを反映させた”刑事コ
ロンボ”は、最初から大成功をおさめた。
こうなると、制作現場の空気は「正しいのはフォ
ークさんだ」となる。
ことごとく対立していた原作者コンビの案をその
まま映像化しても、これほどの視聴率は得られな
かっただろう、と思うようになってくる。
では、原作者コンビの意向を忠実に映像化して
いたら、どうなっていたであろうか。
こんな話がある。
ある日、バート・フリードがピーター・フォーク版
”刑事コロンボ”を観ていた。
フリードは、当ブログでも何度も取り上げている
初代のコロンボ警部を演じた俳優である。
1960年放送のフリード版コロンボ警部が登場し
た”Enough Rope"は、大きな反響こそ呼ばなかっ
たものの、制作者サイドでは力の入った作品だった。
当時としては極めて珍しいカラー放送だったから
である。
1960年にしてカラー放送とは、何とも早い。
記念すべき作品といえるかもしれない。
だが、観ていたフリードは、フォークが演ずるとこ
ろのコロンボ警部が、かつて自分も演じたことのあ
るコロンボ警部だとは気がつかなかったのである。
つまり、フリード版のコロンボ警部とフォーク版の
コロンボ警部とでは、当人ですらわからないほどの
開きがあるということである。
が生み出した」というのは、こうしたことからも納得
していただけると思う。
~続く~