私はごみ箱を覗き込んだ。
回転刃はステンレス製の銀色である。
鼻紙と髭ゴミに混じっていても、目立つはず
だ。
光って見えるかもしれない。
目を凝らしてみる。
見つかれば、すぐに摘み上げればよい。
だが見えるのはゴミだけだ。
真上から落ちただけだからゴミの上に載って
いるのでは?という見込みは崩れた。
では、どうすれば良いだろう?
ごみ箱に手を突っ込んで探すべきか?
しかし、ごみ箱に手をいれることには抵抗が
ある。
何しろ相手はゴミである。
そのゴミの素性は私が鼻をかんだ紙と髭ゴ
ミだ。
つい最近まで自分の体の一部分だったもの
である。
だが、一度体から離れてしまえばゴミになる。
何と非情なことか。
おっと、ゴミに情をかけている場合ではない。
ここは一刻も早く回転刃を見つけなければな
らない。
~続く~