Sさんのおしゃべりが少し間が空いた。
すると左隣のKさんが話しかけてきた。
Kさんは私の父と同世代の男性である。
「ケーキちゃん」
私はご近所さんからは昔からそう呼ばれていた。
「ちゃん」か「君」付けである。
オジサンである私であるが、未だに変わらない。
「お父さんお母さんの供養ちゃんとしている?先祖供
養は大事だからね!」
えぇ~、いきなり先祖供養の勧めか?
しかもソフトではあるが説教口調である。
Kさんは元々は、そういったことを他者に言う人では
ない。
信仰心はある人で、市内の有名寺院主催の仏教作
家の講演会にも参加したりしている。
だが、信仰心があることと先祖供養を勧めることは同
じようであってもその実は異なる。
「先祖供養を怠っている家は良いことが無いから」
そういうことまで言うのか。
なんだか変わったなぁ。
自らの死を予感して、宗教にのめりこんでいるように
感じる。
おかしな宗教団体と関わるよりはマシかもしれない。
だが、伝統ある仏教宗派であってもその捉え方信仰の
姿勢、理解度によって危険は同じくらい増していく。
狂信は害悪でしかない。
それは違う方向の堕落を招く。
大丈夫かなぁ、Kさん。
Kさんの口調には、ただならぬものがあった。
~続く~