Kさんの話が終わると、再びSさんが話しかけて
きた。
まだ話したりないのか?
私はたまに相槌を打つだけで、ほとんど話をして
いない。
Sさんは自分の話を聞いてほしいのか?
それとも単におしゃべりがしたいだけなのか?
あるいは元々そういう生き物なのか?
ここはおしゃべりの場ではない。
通夜の席である。
故人に思いを巡らす場ではなのか?
そこまででなくとも、静かにしていることすらできな
いのか?
おしゃべりをしているのは、この二人だけではない。
会場全体から、おしゃべりが聞こえてくる。
そんなにおしゃべりがしたいのだろうか?
実の無い無駄なことを話せば話すほど人は退化し
ていくのである。
そうしているうちに開式の時刻が来た。
葬儀業者の司会で通夜式は始まった。
僧侶が入場が告げられた。
参列者は合掌で迎えるようにとアナウンスされた。
会場の後ろ真ん中の通路を通って僧侶が歩いてく
る。
合掌で迎えるほどの僧侶なのか?
私は観察を開始した。
~続く~