不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

班での通夜参列。その④

 私の両端にはKさんとSさんが座った。
 Kさんは男性、Sさんは女性で二人とも私の両親の世
代である。
 座ると早速Sさんが話しかけてきた。
 さっきまでクルマの中でおしゃべりをしていたのに、ま
た話すのか。
 いずれにせよ、実のある話ではあるまい。
 私は聞き役に徹した。
 話はどれも当たり障りのない、別の意味では意味のな
いものばかりである。
 それも楽し気な明るい話題ばかりである。
 通夜の席で明るい話、遺族が耳にしたら気分を害す
るだろう。
 だが、そんなことは御構い無しである。 
 通夜・葬儀の場では、ある種の人たちは気分が高揚し
てしまい、はしゃいだ感じになる。
 これは自分自身の死を連想しないようにと無意識がそ
うさせているかのようだ。
 あぁこんな話をするくらいなら、少しは黙っていたらどう
なんだ。
 ここは通夜の席であり、おしゃべり・雑談の場ではない。
 子供じゃあるまいし、良識は無いのだろうか。
 おしゃべりは、なおも続く。
 自分も遠からず故人となるのに、そうした自覚は一切無
いようだ。
 「皆は死んでも、自分はまだしばらくは死なない」
 そんな便利な思い込みに支配されているようだ。
 80過ぎまで生きてきていったい今まで何をしてきたのだ
ろうか?

 ~続く~