修証義の一連の脅し文句が実に嫌味である。
あぁ、気に入らない。
曹洞宗の葬儀次第は葬儀を寺の営業種目として行うように
なってから、半ば無理矢理に成立させたものではなかろうか。
そして焼香がはじまった。
参列者が少ないので、すぐに私達の番になった。
席に戻り、読経に耳を傾ける。
何か事務的な響きがあるなぁ。
読経が終わり、坊さんの退場となった。
だが、何も言わず、あっさり会場を出ていった。
あれ?
何も言わないの?
当地では通夜の終わりに坊さんが参列者に向かってマイク
を通して何か一言語るのが通例となっている。
今回はそれが無い。
やはり、葬儀業者の紹介なのであっさりしたもんだな。
Nさんの旦那さんも同じように思ったそうだ。
まぁ、それもS家の事情によるものなので、近所の人間が口
を挟むことでなかろう。
式後、何人もの女性が遺体の顔を見に行った。
Sさんの家で散々見ただろうに、まだ見たいのか。
魂の抜け殻であるただの腐りやすい物質に、もはや意味は
殆ど無い。
私は棺に群がるその様子を冷めた目で眺めていた。
~続く~