不二家憩希のブログ

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オール巨人「漫才も闘病も全力投球!」その⑤

 その日オール阪神巨人は吉本の劇場での公演だっ
た。
 阪神は単独での仕事でラジオのレポーターとして収
録をしており、それが終わり次第劇場入りという予定
だった。
 その日の公演が始まった。
 しかし、阪神は来ない。
 オール阪神巨人の出番が迫る。
 それでも、来ない。
 オール阪神巨人は、早めの出番が多い。
 先に出て劇場を爆笑で沸かして、場の雰囲気を作る
ポジションを任せられていた。
 仕方がないので、巨人は詫びて後の出番の演者に
先に出てもらうように頼む。
 巨人は待つ。
 それでも来ない。
 また次の演者にスライド出演を頼む。
 これが何組も続いた。
 巨人は先輩芸人たちに頭を下げ続けた。
 巨人は演者たちへの申し訳なさと苛立ちの二つの
気持ちに潰されそうになる。
 そうでなくとも巨人は、礼儀作法、長幼の序に厳しい
人である。
 こうした遅刻はあってはならないというのが基本にある。
 そして、とうとうトリの人生幸朗・生恵幸子の番になっ
てしまった。
 巨人は、この大御所師匠にも頼んで先に出てもらわな
ければならない。
 戦前から活躍している大先輩に詫びて、出番をずらし
てもらった。
 これは巨人には実に辛いことであった。
 そうしているうちに、やっと阪神が劇場に現れた。
 「何しとったんや!」
 「連絡したで」
 「聞いとらんわ!」
 これで大喧嘩となる。 
 だが、舞台はにこやかに務める。
 そして終わってから改めて大喧嘩である。
 「もうお前とはコンビ別れや!」
 「おぉ、こっちこそお前とはやっとれん!」
 それまでなかったほどの大喧嘩となった。
 さて、そうなるといつ解散を発表するか、というところまでなった。
 しかし、そこへある知らせが入る。
 事態は急変する。
 
 ~続く~