不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

熊谷守一をテレビで観る

 NHK総合「あの人に会いたい」熊谷守一を取りあげ
ていた。
 熊谷守一といえば、時折TVのなんでも鑑定団でも鑑定さ
れるのを見るが、その度に日本の画家としてはトップクラ
スの鑑定額がつけられている画家である。
 だが、彼は若い頃は気が乗らない向かないといって、絵
を描こうとはしなかった。
 描いても売れない、という画家ではなく描けば売れると
いうクラスの画家なのに描かなかった。
 画家が絵を描かないから収入はない。描かないまでも、
絵を教えるとかすればまだしも、それもしなかった。
 奥さんと子供も5人もいるのに、絵を描かなかった。
 奥さんが「描いてください。そうすれば暮らしていけま
す」と懇願されても描かなかった。
 周囲からも散々意見されたのだが、それでも描かなかっ
た。
 5人のうち2人を病気で失っているが、それもその子た
ちを医者にかからせることが出来なかったからである。
 貧乏で子供失っても描こうとしないとは。
 自分の心が澄み渡るまで描こうとしなかったらしい。
 私には理解できない世界である。
 描いて売れるとなったら、私だったらホイホイ描いてし
まうところである。

 文化勲章を授与されるという話も断った。
 画家に文化勲章が授与されるということは、その時代に
おける最高の画家であるという証明の一つであるといえる。
 でも断った。
 金に頓着しない人は、名誉にも興味がない。このふたつ
は、常にワンセットである。
 名誉だどうだ、とか言う人はやっぱり、お金も大好きだ。
お金が嫌いな人はいませんよ、と言われそうだが、名誉好
きの人は、一般の人よりも、強くお金を求めている。
 それを表に出さないように気を使っているだけである。
 
 画家で作品が売れなくて貧乏、という話は多くある。
 だが、熊谷守一は、描けば売れるのに描かないので貧乏、
という特殊な画家である。
 世界的にも極めて特殊な例だと思う。
 
 それが、今では最も人気のある画家のひとりである。
 亡くなったお子さんたちはどんな気持ちだったのだろう
か。
 本人が芸術に生きるのは勝手だし自由だが、巻き添えを
食らった家族にとっては、たまったものではなかったので
はなかろうか。

 芸術家とは厄介な生き物である。