不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

ラジオのアンテナを曲げる

 いつもは聴かない地元FM局をまともな感度で聴こう
とすると、アンテナを通常とは違う方向に向けなけれ
ばならない。
 どうしてこのFM局だけ違う方向にアンテナを向けな
ければならないのか、電気や電波にも疎い私にはよく
分からない。
 局の所在地がどの局も同じなのに、何故なのだろう。
 この局からの電波だけ曲がって飛んでくるのだろう
か?
 アンテナを具合が良い方向に向けた。だが、この具
合が良いというのは電波に対してだけであって、人間
である私にとっては都合が悪い。
 ちょうど部屋の通り道をふさぐ様に横に倒さなけれ
ばならないからだ。
 気をつけないと、アンテナが足に引っかかるのであ
る。長くもない足でも、引っかかる時は引っかかるの
である。
 私はお目当ての番組の「ハートオブサンデー」を聴
こうとアンテナをその方向に向けた。
 今日の番組は、ボサノバの特集である。
 なかなか良い選曲だ。日曜日にぴったりだ。

 番組が終わり、私は隣の部屋に行き小さな用事を済
ませ、ラジオを聴いていた部屋に戻ろうとした。
 私は、普段から注意力散漫なところがある。
 というか、忘れっぽいと言っても良いのかもしれな
い。
 私が部屋に入ると、足にグニャッという感覚が伝わ
った。
 もしや、いや、まさか。
 ラジオを見ると、アンテナが曲がっている。
 やってしまった。
 ラジオのアンテナは細く銀色で目に付きにくい。そ
んな言い訳を思いついたのだが、言い訳でアンテナが
元に戻るわけではない。
 私は、ラジオに近づいてみる。
 それほど曲がっていない。だが、間違いなく曲がっ
ている。
 折れなくて良かったとも思ったが、それも単なるプ
ラス思考である。プラス思考で曲がったアンテナが真
っ直ぐになるわけでもない。
 私は少し曲がったアンテナを、元通りにしようと逆
の方向に曲げてみた。
 お、割と簡単に真っ直ぐになるではないか。
 ほんの一瞬でも心配をして損をした気分である。
 
 自分では、気をつけているつもりでも、それが大き
く人命に関わることとかでもなければ、私はつい忘れ
てしまう。 
 嫌だなぁ、とその時はそう思うのだが、それも忘れ
てしまう。
 
 本心から懲りていないので、過ちは繰り返されるの
だろうか。
 だが、懲りれば本当に過ちは無くなるのだろうか?
 このあたりは、私には分からない。

 この地球上には、分からないことが多い。