私は自転車で走っていた。
前方には国道との交差点がある。
その交差点の歩道に小学生らしい女子児童が
二人座っている。
小学生かひょっとしたら中学生かもしれない。
二人は画板を抱えている。
写生をしているのだ。
この方向からだと何を描いているのか。
この辺りには、絵のモデルになりそうなものは無
さそうに思える。
二人の視線を追ってみる。
どうやら交差点の隅に建つデイケアセンターを描
いているらしい。
えぇ~、あれを描いているのか。
そのセンターは元々コンビニエンスストアのだっ
たフランチャイズ店舗だった。
だが国道沿いという立地の割りには売り上げが
芳しくなく閉店してしまった。
今のセンターは、そのコンビニの建物で内部を
改装し再出発したものである。
元がコンビニの店舗なので建物としてはごく在り
来りである。
ただ新たにつけられたデイケアセンターのくすん
だ赤色の看板だけが妙に目立っている。
へぇ~、こういうものを写生の題材に選ぶのか。
これは二人のうちどちらかがここに決めたので、
もう一人がそれに付き合っているのだろうか。
それとも両者合意の上、そこに陣取っているのだ
ろうか。
せっかく絵を描くなら、クルマの通りが少ないもっ
と静かな場所にすれば良いと思う。
しかし、この二人はそんなことは思いしなかった
ようだ。
おっと、私は偉そうなことを言ってはいけない。
私の絵の腕前からすると、そのようなひとさまの
絵の題材選びに注文をつける資格などない。
私は(それにしてもなぁ)と思いつつ私は二人の
横を通り過ぎた。