不二家憩希のブログ

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お祭りの裏方で。その⑤

 私の持ち場までは、ほんの十数メートルの距離に
ある。
 駐車場を左に曲がってすぐの歩道である。
 そこにはグループリーダーのINさんが立っておられ
た。
 INさんは本日の私の相棒なのだ。
 事前の説明会では「各エリアでは二人一組となっ
て、活動する」とされていた。
 一人では信用できないのか、二人一組にして作業
の確実性を増そうとしているのか。
  コンビを組ませることにより、互いを牽制・監視させ
てサボりを防止させようとしているのか。
 これも、祭典長の策略なのだろうか。
 このプランの全体は祭典長の独断で決められている。
 あの人だったら、そう考えていたとしても不思議では
ない。
 「ちょっとこれ持っていて」
 INさんは、そう言うと持っていた赤い誘導灯を私に預
け、持ち場を離れた。
 他のメンバーに最終確認に行ったようだ。
 今回の私たちの作業は、お祭りによる通行止めのエ
リアのもう一区間外回りのポイントに立ち交通誘導をす
るというものである。
 本来ならば通行止めの交差点など直前の箇所に人が
立ち、そこで誘導すれば十分だと思われる。
 だが、祭典長はそれだけでは不満らしく、その周りに
も人を配置することによりお祭りのエリアにクルマが入
ってこないようにしたいらしい。
 そんなことできるのだろうか?
 そもそも私たちは警察官ではないし、プロの交通誘導
員でもない。
 駆り出されたただの素人である。
 クルマを誘導する権限など持っていないのだ。
 普通に走っているクルマの行く手を、どうこうできるわ
けがない。
 ドライバーと揉めても、どうしようもない。
 スケジュールによると私たちに託されたのは2時から
3時までの1時間である。
 たった1時間、されど1時間である。
 さて、これからどうなるのだろうか?
 
 ~続く~