小雨降る日曜日の午後1時過ぎ、私は傘を差して
歩く。
集会所の前の路地を少し行くと、通りに出る。
いつもの町並みが、雨に濡れて少し光って見える。
普段は自転車で通りすぎる景色が、ゆっくり変わっ
ていく。
桜並木が見えてきた。
この雨にも何とか持ちこたえている。
だが、もう長くはないだろう。
歩道は落ちた花びらで薄くピンク色になっている。
私が配置された現場の近くには、商業施設がいく
つか合う。
作業開始時刻まで、まだしばらく時間はある。
雨宿りも兼ねて中に入って過ごさせてもらおう。
この日は買い物の予定はないが、いずれ買い物に
来るので大目に見ていただきたい。
日曜日とあって店内はお客さんも多い。
「これは買う?」
「いらない!」
「なんで?」
活発に言い合っている夫婦連れらしい男女が何組
もいる。
いろいろと店内をグルグル回っていたら、時間はす
ぐに過ぎていく。
時計を見ると開始時刻まであと8分だ。
私は店を出て傘を差した。
~続く~