不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

お祭りの裏方で。その④

 小雨降る日曜日の午後1時過ぎ、私は傘を差して
歩く。
 集会所の前の路地を少し行くと、通りに出る。
 いつもの町並みが、雨に濡れて少し光って見える。
 普段は自転車で通りすぎる景色が、ゆっくり変わっ
ていく。
 桜並木が見えてきた。
 この雨にも何とか持ちこたえている。
 だが、もう長くはないだろう。
 歩道は落ちた花びらで薄くピンク色になっている。
 私が配置された現場の近くには、商業施設がいく
つか合う。
 作業開始時刻まで、まだしばらく時間はある。 
 雨宿りも兼ねて中に入って過ごさせてもらおう。
 この日は買い物の予定はないが、いずれ買い物に
来るので大目に見ていただきたい。
 日曜日とあって店内はお客さんも多い。
 「これは買う?」
 「いらない!」
 「なんで?」
 活発に言い合っている夫婦連れらしい男女が何組
もいる。
 いろいろと店内をグルグル回っていたら、時間はす
ぐに過ぎていく。
 時計を見ると開始時刻まであと8分だ。
 私は店を出て傘を差した。
 
 ~続く~