タイムマシンに乗って第二次大戦前の東京に行く。
そこで都民に話しかける。
「あと10年後には東京は一面焼け野原になるんですよ」
写真を見せて説明したいところだが、時間旅行においては物品の持ち出しは禁じられている。
口頭で説明するしか無い。
「お前、何を馬鹿なことを言ってるんだ?満州事変とかはあったけれど、どうして東京が焼け野原になるんだよぉ?」
皆が私を狂人を見る目で見ている。
哀れみと嫌悪が混じった冷たさがある。
そんな目で私を見ることは、私もよく分かる。
突然現れて「東京が焼け野原になる」などと突拍子もないことを言う男を信じられる訳がない。
彼らにとっては要らぬ話であり、余計なお世話だったかもしれない。
もし理解できる人がいたら、貴重な文化財等を疎開させるように働きかけるつもりだったのだが、それには程遠いようだ。
東京が壊滅的な状況になることを理解できない都民に、これ以上説明しても意味はあるのか?
だが、タイムマシンの使用許可が次におりるのは、いつのことかわからない。
この際、説明していこう。
東京は、焼け野原となり多数の戦没者を出すが、終戦後の驚異的経済発展により、戦前を上回る繁栄の時を迎える。
だから、それほど心配することはありませんよ。
空襲を何とか生き残って下さい。
生き残れば良いことがありますよ。
私はそう告げると、タイムマシンに乗り込んだ。
一瞬にして現代に戻ってきた。
タイムマシンを降り、振り返る。
あれ以上、詳細にわたって説明しても、あの人達には理解できないだろうな。
知らぬが仏なのかもしれない。
新型コロナワクチン禍の大惨劇直前の現在にける私は、そんな感じである。
どこまで語って良いのやら?
思案の日々である。