私はこの年齢になって、ようやく身につけた作法がある。
それは「人の話を聞いていて、いちいち反論、訂正などをせず、黙って聞いていること」である。
私は昔からこれができなかった。
人が間違っていることを言っているのを聞くと、即座に反応してしまう。
「それは間違い、こちらが正しい」と言ってしまっていた。
黙っていられなかった。
間違いを正すことこそ正義だ、と確信していた。
だが、ここ数年、それは本当に正しい姿勢なのか?と思うようになった。
他者の発言に反応し真実を教えても、それは功を奏するとは限らないことに気がついたのだ。
私が教えても、その発言者は必ずしも自説を改めるわけではない。
内心では自説を固持しているであろうことが、見て取れる。
私が意見しても殆ど意味がない。
私のその場の発言程度で人は変わらない、変わろうとしない。
彼らは彼らで自力で真実を見出してくれれば良い。
彼らが間違った価値観、考え方を持続していったとしても、それも彼らの運命である。
私は彼らの話を黙って聞いていることにした。
この方が私の精神衛生上も益が大きい。
沈黙は意味があることに気がついたのだ。
あぁ、もっと早くこれを悟っていればなぁ(苦笑)
お恥ずかしい限りである。