不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

「大丈夫ですか?」は体裁を保つツールでしかない。

 先日俳優の津川雅彦さんと朝丘雪路さんの合同お別れ
会が開かれたそうだ。
 こんなことがあった。
 朝丘さんが亡くなった約一ヶ月後に津川さんが記者会見
に応じた。
 有名芸能人の妻が亡くなってから日が経っている。
 没後すぐに何らかの表明があると見られていたが、津川
さんからは反応が無かった。
 異例の遅い会見となった。
 津川さんは透明の酸素吸入用の管を鼻に付けている。
 やつれており覇気が感じられない。
 冒頭すぐに記者からこう声をかけられた。
 「大丈夫ですか?」
 これに津川さんは呆れた感じでこう答えた。
 「大丈夫じゃないねぇ」
 この言葉に記者たちは特に反応することもなく、事前に用
意してあったであろう質問に移った。
 津川さんの表情には諦観が漂った。
 記者たちは言葉では「大丈夫ですか」と言ってはいるが、
本気で津川さんの心配をしているわけではない。
 それは”自分たちは心配していますよ”という自分たちの体
裁を確保するために言っているだけに過ぎない。
 当ブログで以前から指摘しているように、心から心配してい
る人は大丈夫そうではない人に対しては「大丈夫ですか?」
とは言わない。
 すぐに具体的な助けを提案し実行する。
 問いかけなどしない。
 大丈夫か否かが一目瞭然の人に呑気に尋ねはしないのだ。
 私は「大丈夫ですか?」と言われたら「大丈夫じゃない」と答える。 
 そう言われるとその人はただ突っ立っているだけで、何もしては
くれない。
 困ったような反応を示すだけである。
 人はこうした時の態度でその内実を明らかにする。
 飾って生きていても内面の空虚さは突如として顕になるのだ。
 津川さんのこの記者会見は5月20日に行われた。
 それから約2ヶ月半後の8月8日に津川さんは亡くなった。
 大丈夫ではなかったのだ。
 当人も記者会見どころではない体調だったに違いない。