夕方、町内会の班長さんがわが家に来られた。
年次総会出席の委任状への署名・捺印集めや連絡
事項がいくつかあった。
その連絡事項の中には訃報もあった。
「○班のTEさんがお亡くなりになりました」
班長さんはそう言って式の日時が印刷された紙を手
渡してくれた。
え~!TEさんが亡くなった?
本当か?
紙を見ると亡くなったのは大旦那さんだった。
大旦那さんは、この1年ほどめっきり老け込んでしま
っていた。
「ちょっと心配だから運転免許は返納したのよ」
そう奥さんが教えてくれたのは1年ほど前のことだった。
TEさんの大旦那さんは私の両親の世代の人だから、
結構な年である。
それでも、免許を返すとなると余程のことである。
同じくらいの年齢の人たちは普通に運転している。
私は奥さんとは会って話をするが、大旦那さんとは挨
拶程度しか接触が無かった。
お宅に伺って、奥さんがおられればそれで用は済む。
いなければ、大旦那さんが出て来られて不在の旨を
告げられた。
「あ~、いま家内はいないんだけれど・・・」
そう言われると私は出直す、ということになる。
よくあるパターンである。
その短い受け答えがこの1年の間に徐々に変化してい
った。
最初のうちは私が来れば(あぁ近所の不二家君だね!)
という普通の態度だった。
それが、段々と頼りないものになっていった。
半年ほど前には「どちら様ですか?」と尋ねられた。
私の顔を忘れてしまったようだった。
これには私は少々ショックだった。
ひょっとするとこれが認知症というものか。
否、単に忘れてしまっただけなのか。
この数ヶ月は顔を合わせても私が誰かがまるでわかっ
ていないようだった。
そして昨年11月には玄関先で転倒し骨折してしまった。
それ以来外出することも無くなってしまっていたようだった。
それでも亡くなってしまったとは急なことである。
~続く~