話が進む中、Nさんがこう言った。
「お墓はどこになるの?」
都市部の方などには違和感がある発言かもしれない。
その家の墓の場所を皆の前で問うのである。
微妙なプライバシーの問題を含んでいる。
そんなことを聞いてくるのか、と不愉快に感じる方もおら
れるかもしれない。
だが、当地の当町内の空気では、普通のことである。
プライバシーの線引きが、緩いのだ。
市としては発展を遂げてはいるが、市民の意識は実に
田舎、旧社会的なのだ。
人によっては、こういった問いかけに綺麗に答えられるよ
うに諸々の準備をするのである。
他者の目を第一に気にする田舎特有の心理である。
TSさんの家には墓が無かったのだが、いろいろ探した後、
市内の少し遠方の地に墓地を確保したそうだ。
質問したNさんは、墓地の場所を尋ねたといっても、墓参
りに行くとは思えない。
ただ聞いただけ、なのだろう。
行くつもりもないのだ。
それなのにお墓はどこ?と聞いてしまう当地の常識には、
昔から呆れている。
こうした薄っぺらい好奇心によって構成される当地の常識、
空気には私もかつては反発もした。
しかし、今ではそうした反発する気持ちも心中に留め、態
度や表情には一切表さなくなった。
私も成長したものである。
ここまでくるのに何十年もかかったのだ。
~続く~