不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

班での弔問。その④

 話が進む中、Nさんがこう言った。
 「お墓はどこになるの?」
 都市部の方などには違和感がある発言かもしれない。
 その家の墓の場所を皆の前で問うのである。
 微妙なプライバシーの問題を含んでいる。
 そんなことを聞いてくるのか、と不愉快に感じる方もおら
れるかもしれない。
 だが、当地の当町内の空気では、普通のことである。
 プライバシーの線引きが、緩いのだ。
 市としては発展を遂げてはいるが、市民の意識は実に
田舎、旧社会的なのだ。
 人によっては、こういった問いかけに綺麗に答えられるよ
うに諸々の準備をするのである。
 他者の目を第一に気にする田舎特有の心理である。
 TSさんの家には墓が無かったのだが、いろいろ探した後、
市内の少し遠方の地に墓地を確保したそうだ。
 質問したNさんは、墓地の場所を尋ねたといっても、墓参
りに行くとは思えない。
 ただ聞いただけ、なのだろう。
 行くつもりもないのだ。
 それなのにお墓はどこ?と聞いてしまう当地の常識には、
昔から呆れている。
 こうした薄っぺらい好奇心によって構成される当地の常識、
空気には私もかつては反発もした。
 しかし、今ではそうした反発する気持ちも心中に留め、態
度や表情には一切表さなくなった。
 私も成長したものである。
 ここまでくるのに何十年もかかったのだ。

 ~続く~