不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

お祭りの裏方で。その⑨

 小雨は降り続ける。
 幹線道路の歩道にINさんと私は立っている。
 時折INさんが話しかけてくる。
 「お父さんが亡くなって何年になる?」
 「お母さんが亡くなって何年になる?」
 私の両親とINさんとは世代がほぼ同じであったこ
となどから、親しかった。
 他にもいろいろと尋ねられる。
 そんなこと知ってどうする?というようなことも聞い
てくる。
 このあたりのことを割と平気で聞いてくるという感
覚が、当地が田舎とされている所以であろう。
 人口や各種産業の生産高、取引高の数字を見れ
ば、当地は田舎とはいえない。
 だが、他者のプライバシーの領域にずんずんと入っ
てくるこのコミュニケーション・マナーは、まさしく田舎
のそれである。
 この件について記すと長くなるので、ここでは割愛
する。
 私もかつては、こういったことをズケズケと聞かれる
と少なからずムッとしたものだ。
 特に10代、20代の頃は実に不快に感じた。
 それが、年月が過ぎると感覚が変わってきた。
 (まぁ、聞きたいのならはなしてあげよう)となってき
た。
 いちいちこちらが気分を悪くしてはつまらない。
 それに聞いてくる方も、ただの暇つぶしで尋ねてい
るだけである。
 少しはそれに付き合って上げよう、という気になって
きた。
 また、きっちり返答することによって会話のコントロー
ルがこちら側でもできることに気がついたのだ。
 我ながら、随分大人になったものである。
 もっとも戸籍の年齢は、既に十分すぎるほど大人で
はある。
 
 ~続く~