INさんによる身辺調査的な問いかけは、ひとしきり
続いたが、それも終わった。
おそらく飽きたのだろう。
きっちり答えるが、その内容は当たり障りのないも
のにとどめておく。
特別なトピックを提供するわけでもない。
一方的に私が聞かれる側だった。
こういう際には、その立場が望ましい。
返答に徹するのだ。
下手に「ではお宅は？」と尋ねたりすると、藪蛇に
なる。
自分や自分の家族について話したくて仕方ない人
は、もっと話してくる。
そして、より突っ込んだことを聞いてくるようになる。
こうなると、終わりが無い。
INさんは、その後は「この通りはクルマよく通るね」
といった当たり障りのないことを時折話しかけてくるだ
けになった。
私は決してINさんと親しくなりたくないというわけで
はない。
そもそも、どう付き合ったら良いのか？すらわからな
い。
それでも悪い印象は与えたくない。
ここは1時間同じ持ち場を共にするという巡り合わせ
をうまく切り抜けるようにしよう。
小雨の中、時々INさんの問いかけに答える。
それ以外は、ただ突っ立っているだけである。
こんなことのために、2回も延べ3時間40分も事前説
明会に出たのか。
おしゃべりと棒立ちの雨の日曜日である。
ここから数百メートル先では、お祭りの行列やら出し
物やらで賑わっていることだろう。
まぁ、難しい作業を強要されているわけではない。
割り当て時間が過ぎるまでおとなしくしていよう。
～続く～
