不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

班での弔問。その⑤

 TSさんの話はお墓から家の宗旨に移って行った。
 「うちは『新家』なのでお寺はないの」 
 「お寺とかそういうのはない」
 これを聞いて皆が黙る。
 部屋の空気が空気が白くなる。
 そうは言っても親の代には何か宗教があっただろう。
 親の死に際し、僧侶などの宗教家を呼んで通夜・告別
式をしたはずだ。
 TSさんは地元の出身者である。
 その時の寺に頼むわけにはいかないのか。
 寺としても新規顧客の獲得なので内心喜んで来るはず
だ。
 そうした関係先もないようだ。
 そのため葬祭業者に寺を紹介してもらったそうだ。
 宗旨は奥さんの実家と同じ宗派としたそうだ。
 そういえばTSさんは、生前宗教に対し気持ちのこもらな
い態度をとることが多かった。
 露骨ではないが明らか無い「私は興味ありません」という
ことが容易にうかがい知れる物腰だった。
 奥さんも同様である。 
 ちょっと驚くような、気分を害する言動に接したこともある。
 唖然としたこともある。
 そのあたりは長年連れ添った夫婦なので似てくるのだろ
うか。
 あるいは似ているから結婚したのか?
 TSさんの家では、世間体を考えて坊さんを呼んで、通夜・
告別式をするということである。
 日頃、寺とは付き合いのない家は多い。
 それは特に悪いこととではかろう。
 葬式仏教と化してしまった現代の仏教界と日頃から付き
合っている人は、かなりに信心家であろう。
 だが、まるっきりゼロというのも少ないと思われる。
 親の家が何宗か、くらいは把握しているだろう。
 集まった皆は「ほぉ、そうなの」と聞いてはいたが心中は、
少なからず驚いていたに違いない。
 それは表情に表れていた。
 
 ~続く~