偉大なジャズ・ミュージシャンであるトゥーツ・シールマン
ス氏がお亡くなりになった。(以下敬称略)
トゥーツ・シールマンスはハーモニカの巨人である。
その名演は広く知られている。
だが、シールマンスは、元々はジャズ・ギタリストととして
音楽活動を開始している。
シールマンスはジャンゴ・ラインハルトに傾倒するジャン
ゴ派のギタリストなのである。
少しイメージしにくいが、シールマンスの核の部分は、ジ
ャンゴの音楽が占めている。
シールマンスもジャンゴもベルギー出身である。
同国出身の先輩にあこがれても不思議ではない。
シールマンスは、ハーモニカ奏者として人気が出た。
それ以降はメインの楽器はハーモニカとなっていく。
シールマンス=ハーモニカという認識が浸透していく。
しかし、シールマンス自身は内心ではギタリストとして評
価されたいと思っていた。
意外かもしれないが、真実である。
後年大家となってからのインタビューでこう語っている。
「本当はギタリストとしてやっていきたい、とずっと思ってい
たんだけれど、来る仕事来る仕事、全部ハーモニカなんだ
よ(笑)それで断るのも悪いからやってきたんだよ(笑)」
自虐的なユーモアを含んだ口調で、そう語っている。
では、シールマンスのギタリストの腕前はどうだったのだ
ろうか?
シールマンスは、凄腕を揃えることで知られるジョージ・シ
アリング・コンボの出身である。
テクニック的なことでは、申し分ない。
センスも悪くない。
けれども、強い個性に乏しい。
ギタリストとして一本立ちがかなわなかったのは、そのた
めであろうと私は考えている。
そんなシールマンスにも、少ないながらライブでのギター
演奏の映像がアップされている。
これを見ると、「ちょっとおとなしすぎるかな」と思ってしまう。
それでも、開始後1:43秒あたりからの口笛の美しさには驚
嘆してしまう。
何か特別な電気処理を施したかのようなクリアで特別な
美音である。
シールマンスは、口笛とギターのユニゾン演奏という得意
技を披露している。