ミック・ジャガーの歌い方は独特である。
うまいのか、下手なのか、よくわからない。
(下手な歌手だな)と思っておられる方も少なく
ないのではないだろうか。
私もローリング・ストーンズを聞き始めた頃には、
そう思っていた。
ジャガーは華はあっても歌唱力が無く、歌うとど
うしてもあぁ言う風になってしまうのだろう、と思っ
ていた。
だが、それはどうやら間違いであることに気がつ
いた。
ジャガーがいつものあの特徴的な歌い方ではな
く、普通に旋律に沿って歌っている録音を聞いたか
らである。
(なんだ。普通に歌えるのか!)
これは私にとって小さな驚きであった。
こうした例は、レイ・チャールズにもある。
チャールズも実は普通に歌える。
それもナット・キング・コールそっくりのソフトな発声
と歌いまわしである。
歌手デビュー直後は、そうした歌い方だった。
だが、それでは個性が死んでしまう。
何よりナット・キング・コールは、二人はいらない。
そこで、わざとあのような歌唱法に切り替えたの
である。
となると、どうやらジャガーも意図してあのような
歌い方をしているようだ。
では、その歌唱法はジャガー自身が自力で編み
出したものなのか?
それとも、誰か先達の歌唱法を参考にしているの
か?
これは私にとって長年の謎だった。
~続く~