NHK-FM「世界の快適”ギター音楽”セレクション」
3人目のコメント・ゲストは、由紀さおり氏だった。
(以下敬称略)
由紀さおりは、歌手の他にタレント、喜劇女優、
女優、としても活躍している。
いずれの分野でも最高レベルのスキルを有してい
る稀な存在である。
近年は、その歌唱力が海外においても絶賛されて
いる。
由紀ははじめに歌手デビュー直後の頃の思い出を
語った。
レコーディングの際、レコーディングバンドのメンバ
ーにとても怖い人がいた。
ジャズ・ギタリスト・澤田駿吾である。
今日でもそうだが、ジャズの一流ミュージシャンが、
その演奏力を請われて歌謡曲などの録音に参加する
ことはよくある。
由紀が間違えて録音が止まると、澤田が由紀を睨
む。
「あ~、また弾くのかよぉ」と言いたげな表情だった。
本当はただ由紀の方を見ただけなのかもしれない。
だが、由紀は澤田のことが怖くて仕方なかった。
澤田駿吾と言えば、日本のジャズ・ギターの最高峰
である。
最晩年まで活躍し、猛烈なスピードにのった即興演
奏を披露していた。
このエピソードの頃だと澤田も30代か40代始めくらい
であろうか。
才気溢れるジャズ・ギタリストととして活躍中の頃で
ある。
由紀はこの他にも歌手としての心構えや、サウンドに
対する細かい配慮について語った。
実に熱い語り口だった。
由紀は音楽への取り組み方が実に真摯であり、妥協
を許さない厳しい姿勢をもち続けているようだ。
普段テレビでは面白タレント風のコメントが多い。
だが、今回のコメントは実にシリアスなものだった。
これが由紀さおりの素顔に近いのかもしれない。