トイレのタンク内から聞こえてくる水滴音は、止む
ことはなかった。
これが2週間ほど続いた。
続いたと書くと何か自然現象やヒトの健康状態の
ような感じではあるが、要は放ったからし、見て見ぬ
ふりである。
否、この場合は聞こえても聞こえぬふり、というべき
であろうか。
水滴音をきいているだけで何もしていないのである。
でも、少なくともタンクの中を見て確認くらいはしただ
ろう?と思われるかもしれない。
実は、何も見ていない。
タンクのふたを外して見てみるだけのことである。
それすらしていない。
何故しないのか?
それは、私はトイレを見てもよくわからないからである。
タンク内がどういう構造になっているのか、まるでわ
からない。
レバーを動かすと水が流れ、水が一定量流れると自
動的に止まるという仕組みも私には謎である。
タンク内に浮きのようなものがあって、それが浮かん
でくると水が止まるということは聞いたことはある。
だが、その浮きが実際にどう機能しているのか、何故
水が止まるのかとかに関してはチンプンカンプンである。
よって、わからない無知な男がタンク内を覗いてみても、
どうにもならんだろう、と思っていた。
なんとも頼りないお話ではあるが、事実なので仕方が
ない。
それでも毎日続く水滴音は、次第に無視できなくなっ
ていった。
~続く~