トイレのタンクからのは水滴音は、続いた。
何も手を打たないのだから当然である。
トイレに入るたびに(どうしようかなぁ)と思う。
だが、出るとすぐに忘れてしまう。
入ると思い出し、出ると忘れる、である。
これが水滴ではなく、水がシューシュー出ていたら
私の対応も違っていただろう。
それに今回は水滴である。
5秒に一度の水滴ならオオゴトにはならないだろう、
と思ったからでもある。
そうは言っても、水滴音というのは、耳につく。
どういうわけかわからないが、他の音とは違うイン
パクトがある。
かつて、旧ソ連で行われた拷問の方法を思い出す。
真っ暗な部屋に人を閉じ込める。
そして何秒かに1滴ずつの水滴音を聞かせる。
これを数日間続けるだけで、収容者の精神は変調
をきたすというものである。
私はこの拷問を実際に受けた経験がある人の話を
聞きに行ったことがある。
「うわぁ~止めてくれ~!」となったところで思想教
育、いわゆる洗脳に取りかかることになるそうだ。
大したことなさそうで、かなり苦しいそうだ。
幸いにもわが家のトイレは真っ暗ではなく、どちらか
というと明るい方だ。
もちろん夜間も照明はある。
それでもやはり水滴音は気になる。
毎日、毎日続くと気になってくる。
次第にトイレに入ると水滴音のことしか考えなくな
ってしまっていた。
いかん、これでは水滴の思うがままではないか。
何とかせねばならないのか。
~続く~