不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

津島恵子さん、ご逝去。

 女優の津島恵子さんがお亡くなりになった。
 86歳だった。
 そんなお歳だったのか。
 私は芸能人、特に女優に関しては年齢について
は考えないようにしている。
 芸と年齢は直接は関係ないし、何より当人たちが
隠したがっていることが多い。
 それならば、こちらも触れなければよかろう、とい
うことである。
 津島恵子さんは、日本の映画黄金時代の大スタ
ーだった。
 俳優の大滝秀治は自身の俳優デビューについて、
こう語っている。
「私が俳優になったのは、津島恵子さんと共演した
かったからなんですよ」
 私はこの発言を聞いて、(へぇ~)と思うと同時に
(なるほど)と思った。
 当時、津島恵子は、そういう女優だったのだ。
 雑誌”明星”の創刊号の表紙を飾った当時のアイ
ドル女優だった。
 皆の憧れの存在であり、人々に何らかのモチベ
ーションを与える存在だったのである。
 女優としては清純派女優の王道を歩み続けた。
 日本では女優が多少の汚れ役を演じることによ
り評価が上がる、という空気がある。
 体当たり歓迎なのである。
 津島さんはそういう路線には一切行かなかった。
 そのため、第一線を退いた後は芸能マスメディア
的には大物扱いされたり特別扱いされることは少
なかった。 
 テレビでも映画でも、品の良い女性を好演した。
 私は長い間(この人は歳をとらない人だなぁ)と
思って観ていた。
 年齢的に、いわゆる”おばあさん”の世代になっ
てもおばあさんぽくならなかった。
「そこが女優というものだよ」というところなのだろう。
 人生経験で身についてしまった垢のようなものを
一切感じさせない女優だった。
 ”ザ・芸能界”とは対局にある存在だった。
 黒沢明の”七人の侍”では出演者中、数少ない
女優として志乃という娘役を演じた。
  当時の津島さんは雑誌の人気投票で原節子
高峰三枝子を抑えての一位だった。
 黒沢は「志乃はお転婆な娘というイメージで創っ
たけど、津島君はどちらかといえば行儀の良いタイ
プだった」と語っている。
 津島さんが品が良いのは演技ではなかったようだ。
  自然な品のよさと清潔感を嫌味なく演じられる、
津島さんは希有な女優だったと思う。