”刑事コロンボ”第一回放送の”死者の身代金”は、
視聴率35.7%を記録した。
これは、テレビドラマの初回としては、驚異的な
数字である。
普通、テレビドラマは大スターが主演し、人気俳
優が脇を固め、主人公が「いかにもドラマ」といった
大活躍を繰り広げる、と言うものが多い。
”刑事コロンボ”では、そうした常套手段は殆ど使
われていない。
主演の俳優ピーター・フォークは、当時、名前と顔
は広く知られていたので決して無名ではないが、世
間的には「脇役専門の味のある俳優」といった程度
の位置づけだった。
事実、連続テレビドラマの主演は一作品だけで、
他には単発ドラマの主演が数本あるのみである。
映画でも主演は一作品だけで、しかもそれは自身
が主演したテレビドラマの劇場映画版である。
それ以外では、テレビドラマや映画の”重要な脇役”
という役どころが殆どだった。
主役に絡まる役ではあるが、主役ではない。
そんな俳優が主演をし、35.7%の視聴率である。
これは、テレビ界としては異例である。
では、いわゆる”スター”は出なかったかといえば、
出ている。
まず、犯人役は皆スターが演じている。
作品によっては、犯人と関わりのある役でもう一人
スターが出ることもある。
地味と思われていた俳優が主演で、スター俳優が
犯人役、それにもう一人スターが出たり出なかったり、
という構成である。
”死者の身代金”では、犯人役の女優リー・グラント
が唯一知られている存在で、他はあまりネームバリュ
ーがない俳優ばかりで固めている。
しかし、作品は大好評を博した。
この地味な路線は、その後の”刑事コロンボ”でも
引き継がれることになる。
それでも見ていて、(地味なドラマだな)とは一切感
じさせないのは、何故だろうか?
そこは、ピーター・フォークの存在感なのか、犯人が
常にゴージャスな人ばかりだったからであろうか。
そのあたりのバランス感覚が、絶妙なのであろう。
~続く~