不二家憩希のブログ

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フォーク版”刑事コロンボ”の誕生 その22

 ”刑事コロンボ”第一回放送の”死者の身代金”は、
視聴率35.7%を記録した。
 これは、テレビドラマの初回としては、驚異的な
数字である。 
 普通、テレビドラマは大スターが主演し、人気俳
優が脇を固め、主人公が「いかにもドラマ」といった
大活躍を繰り広げる、と言うものが多い。
 ”刑事コロンボ”では、そうした常套手段は殆ど使
われていない。
 主演の俳優ピーター・フォークは、当時、名前と顔
は広く知られていたので決して無名ではないが、世
間的には「脇役専門の味のある俳優」といった程度
の位置づけだった。
 事実、連続テレビドラマの主演は一作品だけで、
他には単発ドラマの主演が数本あるのみである。
 映画でも主演は一作品だけで、しかもそれは自身
が主演したテレビドラマの劇場映画版である。
 それ以外では、テレビドラマや映画の”重要な脇役”
という役どころが殆どだった。
 主役に絡まる役ではあるが、主役ではない。
 そんな俳優が主演をし、35.7%の視聴率である。
 これは、テレビ界としては異例である。
 では、いわゆる”スター”は出なかったかといえば、
出ている。
 まず、犯人役は皆スターが演じている。
 作品によっては、犯人と関わりのある役でもう一人
スターが出ることもある。
 地味と思われていた俳優が主演で、スター俳優が
犯人役、それにもう一人スターが出たり出なかったり、
という構成である。
 ”死者の身代金”では、犯人役の女優リー・グラント
が唯一知られている存在で、他はあまりネームバリュ
ーがない俳優ばかりで固めている。
 しかし、作品は大好評を博した。
 この地味な路線は、その後の”刑事コロンボ”でも
引き継がれることになる。
 それでも見ていて、(地味なドラマだな)とは一切感
じさせないのは、何故だろうか?
 そこは、ピーター・フォークの存在感なのか、犯人が
常にゴージャスな人ばかりだったからであろうか。
 そのあたりのバランス感覚が、絶妙なのであろう。
 
 ~続く~