”刑事コロンボ”の主役を担う以前のピーター・フ
ォークは、脇役が多かったとはいえ、決してパッと
しない俳優ではなかった。
駆け出しの頃から常に仕事のオファーがあり、途
切れなくテレビや映画に出演していた。
これは、俳優としては稀な部類に入る。
米国芸能界には容姿も整い、演技力もある俳優
が山のようにいる。
俳優は常に供給過剰の状態にある。
それでも、(いつか自分もあのスクリーンに)とい
う思いを持ち、オファーを待っている俳優たちがいる
のだ。
俳優として常時活躍できる存在は彼らにとって夢
なのだ。
彼らの活力は、その夢である。
彼らは観客に夢を与える存在となる以前には、自
分も夢を食べて暮らしていたのである。
米国では、俳優として認知されるまでが一苦労な
のである。
その上、コンスタントに出演の機会を得るというの
は、並の俳優では出来ないことである。
フォークがパイロット版の”殺人処方箋”を”刑事コ
ロンボ”としてシリーズ化の打診があった際にも、「忙
しすぎて、良い作品を作る自信が持てない」というも
のだった。
フォークは”刑事コロンボ”以前には”大スター”とは
言えないものの、スター俳優、少なくとも売れっ子・人
気者であったことは間違いない。
~続く~