不二家憩希のブログ

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フォーク版”刑事コロンボ”の誕生 その24

 ”刑事コロンボ”の原作者コンビが事前に想定
していた”コロンボ警部像”とは、どのようなもの
だったのだろうか?
 少なくともピーター・フォークが扮したような人
物ではなかっただろう。
 原作者コンビがフォーク版のコロンボ警部を最
初から気に入っていたのなら、フォークと原作者
コンビは常に論争を繰り広げるようなことはしな
かったで
あろう。
 では、原作者コンビはどのような刑事像を思い
描いていたのだろうか。
 私は、”メグレ警部”の様な刑事、もしくは彼に
近い感じのだと推測している。
 メグレ警部は、フランスのベストセラー作家・ジ
ョルジュ・シムノンが生み出したパリの有名警部
である。
 人情味にあふれたキャラクターの持ち主で、こ
れはメグレ警部が登場した当時としては異例な
存在だった。
 ミステリーの世界では警察関係者は、洋の東
西を問わず「オイコラ」式に描かれることが多く、
人間味を持たせることは殆ど無かった。
 ”シャーロック・ホームズ”の世界では、警察官
は威張り腐った悪役ですらある。
 これは、私立探偵というホームズの立場を明確
にするために敢えて対照的に描いているのだろう。
 だが、その他のミステリーの世界では、警察官
=そっけない役人、というのがメグレ警部登場以
前の定位置だった。
 メグレ警部以降は、人間味のある警察関係者も
少しずつ増え、ミステリーの世界でも表現の幅が
広がっていくことになった。
 「ボロボロのフェルト帽に茶色のスーツにコート」
というのが原作者コンビが脚本に記したコロンボ
警部の容姿である。
 これは、メグレ警部に近い感じではなかろうか。
 メグレ警部の帽子はボロボロではないが、帽子
は必須である。
 もっとも、刑事は大体そんな風体であるといえな
くもないが、イメージとしてはあり得ると思う。
 警察の権力を振りかざしたりすることもなく、紳士
的な対応に徹している。
 犯行現場に何度も足を運び、丁寧な聞き込みを
繰り返す。
 スーパーマン的な才能は発揮しないが、粘り強さ
で事件を追っていく。
 原作者コンビが考えていたコロンボ警部像でも、
それなりに面白い作品が出来上がったことと思う。
 しかし、世界的な大ヒットを記録したかというとそ
れはわからない。
 やはり、そこはフォークの才能があってこそだ、と
私は見ている。
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 右はジャン・ギャバン扮するメグレ警部である。
 
 ~続く~