不二家憩希のブログ

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納谷悟朗さん、ご逝去。その①

 俳優の納谷悟朗さんがお亡くなりになった。
 一般に納谷さんは”声優”と紹介されることが多い。
 だが、ご本人はあくまで自分は”俳優”であると自
認しておられた。
 俳優である自分が要請に従って”声の吹き替え”
という仕事をしているだけで、”声優”などではない。
 声優になったつもりはない。
 そう考えておられた。
 納谷さんと同じ劇団であるテアトル・エコー所属の故・
山田康雄さんは「俺は声優じゃねえよ。人をスーパー
西友)みたいに呼ぶな」と頻繁に言っていた。
 同じくテアトル・エコー所属の熊倉一雄さんも「声優」
と紹介されるとやんわりと否定される。
 俳優としてのプライドが声優と呼ばれることを許さな
いのだろう。
 納谷さんは日本における声の吹き替えの草分けの
世代である。
 1950年代、日本でテレビ放送が開始された。
 番組として外国映画・外国のテレビドラマが登場した。
 劇場公開時には字幕であった作品に俳優のセリフを
日本語で演じる。
 吹き替えである。
 今ではごく当たり前となったことではあるが、当時と
しては画期的な試みである。
 では、それを誰がやるのか?
 当時、声優という職種は存在していない。
 となると、誰がやるのか。
 これができるのはやはり俳優だろう。
 だが、ある程度のキャリアのある俳優はその仕事を
嫌がって受けようとしなかった。
 俳優なのにテレビの仕事で顔が出ないなんて、やっ
てられない。
 プライドがある。
 そこで、仕事を選んでいられない、まだ駆け出しの
若手俳優が起用されることとなった。
 納谷さんもそうした若手俳優の一人だった。
 それ以降、納谷さんは声の吹き替えの分野で第一
人者として活躍された。
 主な吹き替えは、クラーク・ゲーブル、ジョン・ウェイ
 納谷さんが担当される俳優は、大スターが多かった。
 風格ある声は、重鎮の声にぴったりだった。
 
 ~続く~