不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

エンジニア・ロジャー・ニコルス氏、ご逝去。その⑰

がオリジナル・マスター・テープによってプレスさ
れていない、とレコード会社のMCAを告発したこ
とがある。
 スティーリー・ダンの70年代にアナログ録音
されたアルバムが最初にCD化された時に、2番
手以降のマスター・テープが使われている、と言
うのだ。
 マスター・テープはその本来の意味からすると、
世界で1本しか存在しないことになる。
 だが、レコード会社は、そのオリジナルのマス
ター・テープから何本かのテープを複製することが
通例らしい。
 オリジナルは貴重なので、そうしたことをするよ
うだ。
 そうして複製されたテープを第一世代のマスター・
テープと呼んでいるようだ。
 ちなみに、そのテープから複製されると、そのテ
ープは第2世代のマスター・テープとなるらしい。
 複製されているので厳密な言葉の意味では、どれ
もマスター・テープとは言えないと思うが、レコード業
界では、これが常識なのだ。
 外国で盤をプレスされる際には、それらの複製され
たマスター・テープを現地のレコード会社に貸し出す。
 彼の地のレコード会社は、そのマスター・テープを
用いてプレスする。
 こうしたことは、音楽ファンの間でも知られていて、
いわゆる暗黙の了解となっている。
 そして本国では、本当のオリジナル・マスター・テー
プを使ってプレスしている、ということになっている。
 だが、これも「そうしている筈だ」というだけで、プレ
スの現場を見ているわけではないので、そう良心的
に推測しているだけという面もある。
 ロジャー・ニコルスは、そこを見抜いて、告発したの
である。
 ニコルスが、自分の耳でそう判断したのか、あるい
は何らかの計器を用いたのかは、わからない。
 だが、ニコルスは、これを公の場で、告発したので
あった。
 内部の人間の告発であり、極めて異例のことだった。
 
 ~続く~