不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

プロレスとともに始まった我が家のテレビの歴史。

 我が家にテレビが初めて来た日、つまりそれ
は父がテレビを買った日である。
 その当時は未だテレビの普及率も低かった。
 多くの人はテレビが見たかったのだが、テレ
ビ自体が極めて高価だった。
 現在の貨幣価値に換算すると大体70万円、
あるいはそれ以上はしたようだ。
 テレビを買うとはとても大きな買い物だった。
 だが、昭和のその時代、二つの大イベントが
行われた。
 人々はそれを是非テレビで見たい、と思った。
 そしてそれを機会にテレビを購入したのだ。
 そのイベントとは、皇太子ご成婚と東京オリン
ピックである。
 これは良く知られたことで、これらを機にテレビ
は爆発的に普及したといわれる。
 しかし、我が家はそうではなかった。
 父もやはりテレビを買ったのだが、その理由が
異なっていたのだ。
 父は、ご成婚が見たかったわけでもオリンピック
が見たかったわけでもなかった。
 父は、どうしてもテレビで見たかったものがあった
のだ。
 それはプロレスである。
 父はプロレスが大好きだったのだ。
 家にテレビが入る前は、最寄の食堂などで見て
いたようだ。
 しかし、そこは一種の公共の場である。
 それなりに気を使う。
 家にテレビがあれば毎週プロレスが気兼ねせず
に見られるのになぁ、と思っていたようだ。
 父は時折「うちはプロレスを見るためにテレビを買
った」と言っていた。
 我が家のテレビの歴史はプロレスとともに始まった
のであった。