我が家のテレビは最初はもちろん白黒だっ
た。
そして何台かの後にはカラーテレビとなった
。
父は「これでプロレスがカラーで見れる」と言
っていた。
父の中ではテレビは常にプロレス優先だった
のだ。
それから時が経ち、90年代初頭にプロレス
中継は深夜枠に移ってしまった。
テレビ界ではプロレスは無敵ではなかったの
だ。
父は深夜に起きて一人で見ていた。
父は目覚ましをかけなくても、プロレスの時間
になると目が覚めた。
だが、それから少しして父はビデオデッキを買
った。
深夜に起きて見るのも睡眠のリズムが崩れる
と感じたのかもしれない。
その頃ビデオデッキは発売当初よりも価格が
だいぶ下がっており買いやすくはなってはいた
が、まだそれほど安いものではなかった。
だが、父にしてみれば大好きなプロレスをタイ
マー録画できるという魅力が大きかったようだ。
これで深夜に起きて見なくとも済むのだ。
父は録画しておいたプロレス番組を翌日もしく
は週末に見ていた。
父にとってはそれは最大の楽しみの一つであ
ったようだ。
我が家においては映像機器はプロレスによっ
て普及したと言える。
もしこの世にプロレスが無かったら、我が家に
テレビが入るのはもっと遅かっただろう。
また、ビデオデッキも同様だったに違いない。
プロレスは我が家に多大な影響を及ぼしてきた
のだった。