不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

なかなか決まらなかったマドンナ。

「必殺」シリーズの主役、「刑事コロンボ
と同様に後年大ヒット作となる作品でも、製
作当初は役がなかなか決まらなかった作品は
他にもある。
 それは日本の国民的映画とも呼ばれた「男
はつらいよ」のマドンナ役である。
男はつらいよ」のマドンナ役と言えば、そ
の時代の日本を代表する人気女優が付く役で
あっった。
 その話題性は大きく、次回作のマドンナ役
決定の記者会見がシーズンごとに開かれてい
たほどである。
 マドンナ役はその女優の芸能生活の中でも
大きく記されるステイタスの高いキャリアの
一つであったのだ。
 だが、「男はつらいよ」が劇場用映画とし
て製作された当初は違っていた。
 製作スタッフが、いろいろな映画女優にオ
ファーを向けたが、その皆が断ってきたのだ
そうだ。
 その理由は「下町のだんご屋が舞台で、そ
この息子でテキヤの男に惚れられて、一騒動
あった後、ふって終わる」という物語の設定
が嫌だ、つまらない、というものであった。
 確かに「男はつらいよ」の基本設定はその
とおりだ。
 それだけを聞けば話としては地味に聞こえ
るし、面白くも何とも無い。
 自らを一流と任じている女優にとっては、
役不足に思えても仕方ない。
 それまでの映画にあるような夢やロマンを
売る、といった仕掛けも無い。
 加えて今でこそ、「男はつらいよ」は国民
的映画に成長したが、当時はテレビドラマで
ヒットした喜劇を勢いに乗じて映画化する、
というものでしかなく、一過性のブームで終
わるだろうと見られていたのだ。
 製作スタッフは映画女優からは悉く断られ
てしまったので、困ったスタッフは仕方なく
舞台女優の光本幸子を起用したのであった。
 Wikipediaには「抜擢」と記されているが、
実際には抜擢というニュアンスではなかった
のだ。
男はつらいよ」は第一作目が大ヒットし3
ヶ月後には早くも第2作目が公開されている
が、それでも映画女優は出演しようとはしな
かった。
 そのため、「男はつらいよ」では、何作も
の間テレビ女優や舞台女優をキャスティング
するしかなかった。
 時代の先端を行っているかのように思われ
ている女優の時代感覚などと言うものは、そ
の程度のものでしかないのかもしれない。
 世間のそれまでに蓄積された評価に自らを
照らし合わせて見ることによってしか、自分
を推し量れないのであれう。
  映画スターといえる女優がマドンナ役を務
めるようになるのは、やっと6作目の若尾文
子あたりからである。
 今となっては嘘みたいな話だが、これが真
実なのである。