不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

敬老会の出欠でもめる。その④

 この日のSさんは少し違う感じがした。
 我が家に来るなり「区長さんの家の電話番
号を教えて」と言った。
 区長さんの電話番号?
 この前本人と会って話をしてきたのではな
いのか?
 それに区長さんの家は、班は違うがすぐ近
くなので、電話よりも直接行って話した方が
早くはないか?
 加えて区長さんの家は旧家で、前の当主は
当町内擁立の市会議員だったこともある。
 当然、電話帳にも載っている。
 自分で調べてもすぐにわかりそうなものだ。
 何故わざわざ私のところに来て電話番号を
尋ねるのだ?
 ははぁ~ん、私に聞いておいて何かがあっ
た時「班長さんに聞いたんだけど」と言って
責任の所在を曖昧にしようとしているな。
 私は聞き返すと面倒なことになりそうだっ
たので、黙って電話番号を教えることにした。
 私が町内会の役員名簿のプリントを見て電
話番号を言おうとした時、Sさんはこう付け
加えた。
「民生委員のNさんの電話番号も教えて」
 民生委員のNさんの電話番号も?
 民生委員にどういう用事があるのか?
 今年度の民生委員は、△△商店のNさんで
ある。
 △△商店と言えば、町内でも老舗である。
 こちらも電話番号は当然電話帳に載ってい
る。
 何故自分で調べようとしないのだろうか?
 そもそも民生委員が誰なのか知っていれば、
自分でコンタクトを取れば良さそうなもので
ある。
 それを何故私に聞くのだろうか?
 私は役員名簿を見たが、民生委員の電話番
号までは載っていなかった。
 民生委員は市の管轄で町内会とは直接関係
ないからなのであろうか。
 私は、区長さんの電話番号を言おうとする
と、Sさんは私の言葉をさえぎり「これに書
いて」と名刺大のカードを私に渡した。
 これは証拠を残そうとしているのか?それ
は考えすぎか?
 私は区長さんの電話番号を書いて渡した。
 Sさんはそれを見ると「下の名前も書いて」
と言った。
 フルネームが知りたいのか?苗字だけで話
は十分通じると思うのだが。
 私は言われるままに名前も書いて返した。
「民生委員の電話番号は?」とSさんは言っ
た。
「あぁ、民生委員は町内会の役ではないので、
この名簿には出ていないんですよ」と私は答
えた。
「え?」Sさんは私の言っていることがすぐ
に飲み込めないようだった。
 私は丁寧にそのあたりの事情を話した。
 Sさんは何とか納得したようだった。
 それにしてもSさんは何故、区長さんと民
生委員の電話番号を聞きに来たのだろうか?
 Sさんは、カードをしまいながら独り言の
ように言った。
 その言葉は少なからぬ敵意に満ちたもので
あった。

 ~続く~