不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

敬老会の出欠でもめる。その②

 私が敬老会の招待状を配ってから3日後、
同じ班のSさんが訪ねて来られた。
 Sさんは一人暮らしのおばあさんである。
 Sさんが我が家に来られるとは珍しい。
 これは何か特別な用事に違いない。
 Sさんは私が応対に出ると、こう切り出し
た。
「私のところには敬老会の案内が来ていない
んだけれど」
 その顔は笑い顔ではあるが、声の調子は疑
念交じりだった。
 実は敬老会の招待状がSさんの分は無かっ
たのだ。
 だが、それも何らかの理由があってのこと
だろうと、私は深く考えなかった。
 人にはそれぞれ事情があるからだ。
「そうですか」私はそう答えた後、瞬時に脳
みそを回転させた。
 次にどう言おうか、不用意なことを言って
はまずいだろうな、ということは何となくわ
かった。
 私は考えた末、ストレートに言うことにし
た。
 状況がわからない以上策を弄するとかえっ
て状況が複雑になるかもしれないからだ。
「Sさんの分は元々無かったんですよ」とあ
りのままに答えた。
「最初から?」とSさんは聞き返した。
「えぇ、僕は区長さんが持って来たのを配っ
ただけなんです」
 それを聞くとSさんは黙ってしまった。
 このまま黙られても私は困ってしまう。
 私はそこでこう言った。
「僕じゃわからないんで、区長さんのところ
に行って聞いてみたら、どうです?」
 私は難しいボールを区長さんにパスしたの
だ。
「そうね、そうするわ」
「家わかります?」と私は一応尋ねてみた。
「わかる、わかる、今から行ってくる。さよ
うなら」
 そう言うとSさんは。すぐに出て行った。

 その後、夜になっても翌日も翌々日にも、
Sさんからはあの件はどうなったか、といっ
た報告は無い。
 何か一言あっても良さそうだとは思うが、
音沙汰無しだった。
 どうなったのだろうか?

 ~続く~