不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

竜巻直撃を思い出した。その②

 翌日、私は竜巻が通過した跡に行ってみた。
 竜巻は幹線道路である国道沿いに市内を4
キロほど北上したようだ。
 何故かその竜巻は道を通っていた。
 文字通り通り道として抜けやすかったのか
もしれない。
 電話ボックスが完全に壊れている。
 ガラスがバリバリに割れている。
 支柱も折れ曲がり倒れかけている。
 電話ボックスのガラスは強化ガラスで作ら
れていて、多少の衝撃にも耐えられる作りに
なっているはずである。
 それが粉々になってしまっている。
 竜巻の風で割れたのか、それとも何かが飛
んで来てぶつかって壊れたのか。
 そこから数メートル先の街路樹の柳の木は
根こそぎになって倒れている。
 柳は風の抵抗に強いのではなかったのか。
 電柱から外れた電線がぶらんと地上に垂れ
下がっている。
 店の看板は落ちたり、何処かへ飛んでいっ
てしまっている。
 交通標識は当たり前のように折れたり倒れ
たりしている。
 ブルーシートで包まれた家が何軒もあった。
 ジロジロ見ても失礼だと思って、横目で見
て通り過ぎた。
 今だったらブログで発表するかも、と思っ
てもっと取材しているだろうが、当時はそん
な気にはならなかった。

 後日、知人の父上が体験した話を聞いた。
 父上は建築業を営んでおられて、竜巻の翌
日、修繕を頼まれてその家に伺った。
 行くと、一家5人が一部屋で抱き合ってし
くしく泣いていたそうだ。
 そのなかには一家の主のお父さんもいた。
 お父さんも泣いていた。
「一夜明けたのに、未だに怖くて怖くて泣け
てしょうがない」と言われた。
 おばあさんは、
「私は戦争の空襲を経験しているけれど、あ
の時よりもずっと怖かった」と語ったそうだ。
 当地は東京、大阪ほどではないが、それに
次ぐ規模の大きい空襲があった地である。
 その時よりも怖かったらしい。
 空襲よりも怖かったと言う話は、その後他
の人の話でも聞いている。
 空襲を上回る恐ろしさとはどんなものなの
だろうか?
 
 他にこの竜巻に関して私が聞いた話では、
乗用車が竜巻で空中に10メートルくらい巻
き上げられ、空中で一回転して地上に落ちた
のを見た、という目撃談もある。
 普通、乗用車は舞い上がるものではない。

 テレビの映像で見ると、「あっ、ホントに
竜巻だ」と言う感じしかしないが、実際の破
壊力はあまりにも巨大である。

 竜巻は、サンプル数が少な過ぎて研究の対
象になり難いようだ。
 そのためか、研究者の言うことと実際の体
験とは差がまだまだ大きいと思う。
 
 竜巻のような巨大な破壊力を持つ現象に接
すると、自然は人類の味方なのか敵なのか、
よく分からなくなってくる。

 ~続く~