当地にはかつて軍需工場があった。
それも極めて大規模なものだった。
働いていたのは勤労奉仕で全国から集められた学生ら若い人が殆どだった。
軍から派遣された軍人が最高責任者だった。
いつも威張り散らしていた。
敗色が濃厚となった戦争末期、その軍需工場は米国空軍の空襲を受けた。
空襲の際、真っ先に逃げ出したのは軍人たちだった。
民間人を置き去りにして、一目散に工場から離れた。
多くの若者が亡くなった。
終戦後、軍人たちは働いていた人たちから厳しく糾弾された。
その時の様子は手記やインタビューとして記録され文集が編まれた。
当市の市立図書館では、その文集を読むことができる。
信じられないほどの醜態を見せた軍人たちの行動が、細かく記されている。
仮名ではなく、全て実名で書かれている。
権力は人を腐敗させる、という実例を知ることができる。