ヤスオは重なる失策により疲れてしまって
いた。
人はあまりに疲労が重なると、自分や自分
を取り囲む状況がどうでもよくなってくる。
それまでの人生で細心の注意を払って積み
上げてきたものにも何も感じなくなってしま
う。
ヤスオは社長の座を放り出したくなってい
た。
自分が社長になっていなければ、このよう
な精神的な苦痛も蒙らなくて済んだのだ、と
思うようになった。
社長でいれば24時間会社に対して責任があ
り、それを果たすためには大きなエネルギー
が要る。
だがヤスオは、自分のプライドを守るため
に自分が持っているエネルギーの多くを使っ
てしまっている。
普通の社長なら、会社経営に自らを捧げ尽
すものだが、ヤスオにはそれだけの覚悟は最
初から無かった。
ヤスオにとっては自分のプライドこそが最
重要であり、それを抑えてまで何かをしよう
などという考えは浮かばなかった。
皆に推されたから社長になったまでだ、と
いう認識しかなかった。
つまり自分が会社の責任を背負うと言う心
構えなど無かった。
ヤスオには、元々社長としての器が無かっ
たのだろう。
~続く~