不二家憩希のブログ

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社長になった係長 第14話

ヤスオは重なる失策により疲れてしまって
いた。
 人はあまりに疲労が重なると、自分や自分
を取り囲む状況がどうでもよくなってくる。
 それまでの人生で細心の注意を払って積み
上げてきたものにも何も感じなくなってしま
う。
 ヤスオは社長の座を放り出したくなってい
た。
 自分が社長になっていなければ、このよう
な精神的な苦痛も蒙らなくて済んだのだ、と
思うようになった。
 社長でいれば24時間会社に対して責任があ
り、それを果たすためには大きなエネルギー
が要る。
 だがヤスオは、自分のプライドを守るため
に自分が持っているエネルギーの多くを使っ
てしまっている。
 普通の社長なら、会社経営に自らを捧げ尽
すものだが、ヤスオにはそれだけの覚悟は最
初から無かった。
 ヤスオにとっては自分のプライドこそが最
重要であり、それを抑えてまで何かをしよう
などという考えは浮かばなかった。
 皆に推されたから社長になったまでだ、と
いう認識しかなかった。
 つまり自分が会社の責任を背負うと言う心
構えなど無かった。
 ヤスオには、元々社長としての器が無かっ
たのだろう。

 ~続く~