不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

社長になった係長 第2話

 この会社は、他社よりも御曹司やご令嬢の
社員が多い。
 ヤスオが社長室長を務めた先々代の社長も
そうだった。
 ライオンとあだ名されたその社長は、社内
や業界ではそれほど高い評価をされてはいな
かったのだが、圧倒的な自己アピール力によ
り一般ユーザーからは圧倒的な支持を集め社
長に一気に駆け上がったのだった。
 ヤスオは、このライオン社長の前の社長の
時から社長室長の職にあった。
 ライオン社長は、自分の就任と同時にヤス
オを解任することも出来たのだったが、その
ままに留めた。
 これには理由があるのでは、と業界内では
囁かれた。
 ライオン社長は若い頃、社長だったヤスオ
の父に心酔しヤスオの家に出入りしていた。
 ヤスオの父には恩があった。
 この人事は、ライオンの恩返しと見られて
いた。
 ヤスオはライオンとは決してウマが合うわ
けではなかった。
 段取りや根回しを重視する古いタイプのヤ
スオと違い、ライオンは手順を無視した手法
を多用した。
 これはライオンに対する一般ユーザーから
の圧倒的な支持があってこそ可能なのである
が、ヤスオは内心気に入らなかった。
 しかし、この会社の出世コースの重要ポス
トである社長室長を与えられており、逆らえ
なかったのだ。
 このライオンの社長室長時代にはいろいろ
と厄介なこともあった。
 ヤスオは、海外事業部長のマキコには本当
に困らされていたのだ。

 ~続く~