不二家憩希のブログ

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社長になった係長 第18話

 社長室のヤスオに、元社長のヨシローから
電話がかかってきた。
 ヨシローは、社長在任中に大した功績も無
イチローの会社にシェアを奪われそうにな
ったこともあった。
 そんなヨシローが何故か今でもこの会社の
顧問として大きな顔をしていることがヤスオ
には理解できなかった。
 他の者もそう感じていたのだが、無能であ
っても元社長をあえて批判する者は社内には
いなかった。
 そうしたぬるま湯的体質がヤスオの会社の
近年の長期低落傾向の要因の一つになってい
た。
 ヨシローは電話で辞任を思いとどまるよう
に説得を試みたが、ヤスオの意思は変らなか
った。
 ヤスオは、ヨシローからの電話を終えると
辞任会見の原稿の用意を始めた。
 ヤスオは元来、人前での話は得意ではなか
った。 
 ライオン社長のように、舌先一つで全国の
ユーザーの気持ちを掴む技など望むべくも無
かった。
 普段の記者会見の受け答えは、担当の役員
に書かせ、直前にヤスオがチェックしていた。
 しかし、ヤスオは、この場は自分の言葉で
ユーザーに辞任の意向を伝えるべきだと考え
た。
 何とか自分の辞任に正当性を持たせようと
して文面を工夫しようとした。
 記者会見の準備が慌しく進む中で、ヤスオ
は一人原稿を書いていた。

 ~続く~