不二家憩希のブログ

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社長になった係長 第20話

 ヤスオの社長辞任の報は、全国のユーザー
に驚きと落胆をもって迎えられた。
 何故こんなに早く辞任したのか、真意を測
りかねる声も聞こえた。
 この突然の辞任が愚行だったのか、それと
も最善の策だったのか、それは後々になって
みなければわからない。
 一説には、一層激しさを増すイチローの会
社とのシェア争いには、タローの方が向いて
いると判断したヤスオが時期を見計らって身
を引いた、とも言われている。
 だが、この辞任がヤスオの会社に対する全
国のユーザーの不信感を募らせたことは否定
できない。
 古くからのユーザーの中には、もうヤスオ
の会社は使えない、という人も多い。
 そもそも、ヤスオは社長の器ではなかった。
 成り行きにうまく乗って社長にまで出世し
たものの、ヤスオに大企業のリーダーが務ま
るような能力は最初から無かった。
 大勢の社員と全国のユ-ザーの心を掴む事
など無理な話だった。
 係長位の地位で勤めていれば、ヤスオもも
っと幸せだっただろう。

 社長室の向こうのホールではタローが口を
曲げて記者達に今後の社の対応を説明してい
る。

 今度の社長は真に社長の器なのだろうか?
 成り行きとムードで社長が決まってしまう
この会社に未来はあるのだろうか?

 終わり