不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

吉兆の娘が謝ったのは。

 船場吉兆の不祥事について、経営陣の記者会見が
あった。
 この会見は、普通なら世間に向けてのお詫びの意
を表明するものと考えられてていたのであるが、こ
の会見では、そういった世間への謝罪の意向は殆ど
無かった。
 なかでも驚いたのは、創業者の娘に当たる取締役
の会見である。
 涙ながらに頭を下げるのだが、詫びている対象は
顧客でも世間でもなく、彼女の父なのであった。
 この年老いた娘は、父に対して申し訳ない、とい
う言葉を何度も繰り返すのみだった。

 こういった老舗・名店と呼ばれる店や企業では、
こういった思考習慣はありがちなことである。
 確立されたブランドによって守られた企業社会の
内部においては、その思考の閉鎖性は、よりかたく
なになっていき、お客や世間よりも、内々のトップ
や伝統の方が重要視されているのである。
 これは、伝統への忠誠と言ったものではなく、単
なる傲慢である。
 自分達が何によって生かされているのか、といっ
たことにまで思いが及ばぬほど彼らは傲慢なのであ
る。

 私はかつて、仕事で吉兆のおせちの重箱詰めを扱
ったことがある。
 三段重で25万円だった。
 他の名店のものと比較しても、ふた周りは小さい
重箱だった。
 そんな高価な品でも買う人はいた。
 吉兆だからである。

 吉兆の顧客は、今回の不祥事で大いにプライドを
傷つけられた思う。
 まず、顧客に詫びるのが当然の筋である。
 金持ちは怒らせると結構恐ろしいものがあり、意
外なほど執念深い。
 彼らは既に吉兆の代わりの店に乗り換えているの
ではなかろうか。
 吉兆だけが日本料理の店ではないのだ。

 父親に謝っている場合ではないと思う。