ピンセットを買ってきた

　サボテンの鉢とプランターに生えた奇怪な植物を抜
くためのピンセットを買いに行った。
　向かった先は、大型100円ショップ。
　園芸専門店に行けば、それなりのよい道具があるの
だろうが、園芸の費用はなるべく安くあげようという
魂胆しか持っていない私には、100円ショップが現状
における最良の選択ということになる。
　と言っても私は、100円ショップではあまり買い物
をしない。
　それどころか、買い物自体をあまりしない。
　モノを増やしたくないのだ。
　
　店に到着。
　広すぎる店内は、お目当ての品を探すのが大変であ
る。でも、とりあえず自分で探してみる。
　ピンセットって、どこにあるのだろう？
　文具のコーナーか、工具のコーナーか？
　どちらにも無い。
　園芸のコーナーにも無い。
　ぐるぐる店内を回って探してみる。でも見つからな
い。ピンセットなんて置いてないのか？
　結局、店員さんに尋ねてみる。
「あ、それはこちらです」
　さすがに、反応が早い。これだけの品の中でどこに
何があるかを憶えているだけでも大したものだ。
　早足の店員さんの後を付いていく。
「こちらです」
　ピンセット発見。
　しかも日本製だ。珍しい。
　それは、ガーゼや絆創膏のコーナーにあった。なる
ほど。ピンセットと言えば切手をつまむ、くらいしか
思いつかない私には思いつかないわけだ。
　私は、そのピンセットだけを買って店を出た。
　100円ショップで、100しか使わないお客である。

　家に着くと、早速、サボテンの鉢の手入れを開始。
　ピンセットを使わないと、また先日のように、手が
棘だらけになってしまうのだ。
　ウムウム、ピンセットはなかなか優れものだ。

　ほんの数分で、奇怪な植物の撤去完了。
　ピンセットは、土を軽く払って引き出しににしまっ
た。

　その後、自転車の手入れをしようと、工具箱を探っ
ていると、中に別のピンセットがあるではないか。

　えー、ピンセットがこんなところに。
　無いと思っていたピンセットがあったとは。

　ピンセットは、そう使うものではない。一家に２個
もいらないだろう。
　私は、新しく買ってきたピンセットを綺麗に洗って
おくことにした。

　今度は何をつまもうか？