我が家の庭にも彼岸花はある。
実はここ１年ほど咲いていなかった。
花が終わり葉だけの時期となリ、その葉が大量に繁殖した。
少しずつその領地を増やそうとしているかのようだった。
これは良くないな。
彼岸花としての存在意義は認めるが、庭が彼岸花だらけになるのも
困る。
庭の隅に少しだけ咲くから趣があるが、有りすぎると有り難みがな
くなる。
人間の幼稚な価値観に基づいた考え方であるが、そうなのだから仕
方がない。
この地上の管理は人間に任されている。
私はそれらの草を全部刈り取ってしまった。
根っこまでは抜いていない。
これで少しは勢いが収まるだろう。
根っこを引っこ抜いてはおらずそのままなので、来年にはまた咲く
だろうと考えたのだ。
しかし、彼岸花は咲かなかった。
そのそも茎が地上に出てこなかった。
（あぁ、我が家の彼岸花は絶えてしまったのか）
私は自分の行いを悔いた。
葉を刈るくらいどうということはないだろうと思ったのだが、考え
てみれば葉が出なければ光合成ができず根に栄養が行かない。
枯れても不思議ではない。
多すぎると言っては刈り、絶えたと言って悔いる。
実に愚かな思考と行動パターンである。
（今年も彼岸花は無いんだな）そう思っていた。
しかし、少し前から黄緑色の茎が出てきた。
先端には蕾も付いている。
おぉ、彼岸花は生きていたのか。
そして、数日前から彼岸花は赤い花を咲かせている。
数は最盛時の三分の一ほどであるが、それでも咲いている花は普通
の彼岸花の大きさと形を持っている。
良かった。
特別大事にしていたわけではないが、在ると無いとでは大きく違う。
我が家に季節感を教えてくれる大切な存在である。
蘇った彼岸花にその不屈の強さを肖りたいものである。
