漫才師だとは知らなかった。

　私は漫才ブームが起こるまで、横山やすし・西

川きよしを知らなかった。

　まだ子供だったということもあるだろう。

　だが、やすし・きよしよりもずっと後輩のオール

阪神巨人や今いくよ・くるよは知っていた。

　これには理由がある。

　私がお笑いに興味を持ち始めた頃、やすし・き

よしはちょうど活動停止中だったのだ。

　私は西川きよしは、単独のお笑いタレントだと思

っていた。

　桂三枝と二人で素人参加番組の司会として大

変な人気者だということは知っていた。

　ボケと突っ込みを自分一人でこなすスタイルは

当時としては極めて斬新だった。

　また、誰かを馬鹿にしたり攻撃したりすることは

一切ない安心して見ることができるタレントだった。

　私は西川きよしは、そういうことが得意な今で言

うところの「ピン」のお笑いタレントだと思っていた。

　それがある日、漫才コンビとしてテレビに出てい

るではないか。

　えぇ！？

　この人漫才師だったの！？

　私は唖然とした。

　番組での立場は常にトリで大物扱いだった。

　そうだったのか。

　知らなかった。

　でもとにかく面白いな。

　こんな漫才今まで見たことがない。

　どちらかが一言発するたびに大爆笑が起きる。

　それがずっと続くのである。

　凄いなぁ。

　西川きよしに、こんな奥の手があったとは。

　否、これが本来の姿だったのか。

　その後、私がやすし・きよしの大ファンになった

ことは言うまでもない。