多くの桁外れの当たり役を持つ俳優が、その役に
辟易していることは多い。
下降線を辿っている俳優なら、その役で得た過去
の名声を大切にし多くの人が持っているその役の
イメージを再浮上のきっかけとしたいところであろう。
だが、そこそこ順調に俳優活動がおくれている俳
優にとっては、今の自分を縛りつけるものでしかな
い、と思ってしまうようだ。
これを「贅沢だ」と観るか、「もっともだ」と観るかは
意見が分かれるだろう。
コロンボ警部という桁外れの当たり役を持つピータ
ー・フォークは、どうだったのか。
フォークは、世界中、どこへ行っても「刑事コロンボ
でお馴染みのピーター・フォークさん」と紹介されて
いた。
街を歩けば「あっ!コロンボがいる」と指を差される。
南北アメリカ大陸、全ヨーロッパ、アジアと世界で
フォークはコロンボ警部として迎えられた。
人気の高いドイツでは、小さな子供からお年寄りま
で誰からも「コロンボだ」と声をかけたれた。
フォークは、こうした対応を非常に嬉しく思っていた
そうだ。
これほどの栄誉はない、と考えていた。
フォークにとって、コロンボ警部は忌むものでは決し
てなく、最も愛する役だった。
コロンボのイメージが染みついてしまっていても、気
にしなかった。
それらを一瞬で払拭する演技力を身につけているか
らであろう。
フォークは、やはり普通の俳優とは違う感性の持ち
主である。
~続く~