不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

三角頭の異形の主。

 庭の雑草抜きをした。
 陽気が良く、とても11月とは思えない。
 日が当たると汗ばむほどだ。
 そんな絶好の日和ではあったが、早々に終
了した。
 完璧に済ませずに、嫌になったら止める。
 となると、止める判断はたやすく下されるの
だった。
 私は庭の隅の水道で手を洗う。
 手抜きの雑草抜きではあったが、こうして手
を洗っていると何か大きな作業をしたな、とい
う気になってくる。
 すると、首の後ろあたりがもそもそする。
 何だ?
 蜂か?
 そう言えばさっきから「ブーン」と羽音がしてい
たな。
 蜂であれば、こちらから攻撃しなければ刺し
てはこないだろう。
 少し待って、自主退散をお願いするしかない。
 それから、少しして、再び首がもそもそする。
 まだ、留まっているのか。
 手で払いのけるわけにもいかない。
 そんなことをして、こちらが好戦的な姿勢を見
せると厄介なことになりかねない。
「おぅ、やるのか!」となって刺してくるかもしれ
ない。
 強力な武器を備える相手に対し、私は丸腰
である。
 やはり、ここは無抵抗主義を貫くしかない。
 それから、また少しして、再度首の後ろを触
る感触がある。
 これは、本当に蜂なのか?
 蜂にしてはしつこいな。
 だが、首の後ろなので見て確かめるわけに
もいかない。
 映画エクソシストの憑依された女の子でない
限り、人の首は180度には曲がらないのだ。
 それでも何とか見てみたい。
 私は首を90度に曲げて横目で見てみること
にした。
 これなら、私の首に何がいるかはわかるだろう。
 私は首を左にねじった。
 そして、その目の端におぞましき顔が映った。
 黄緑色で三角形の頭に巨大な眼がこちらを
見ている。
「カマキリ!」
 私は心の中でそう叫んだ。
 私は本当は声を出したかったのだが、そこは
何とか踏み止まった。
 私はカマキリが嫌いなのだ。
 うわあぁ~、自分の首の後ろにカマキリがい
るのか。
 どうにかしなければ。
 すぐにシャツを脱ぐべきか。
 私は首を振って振り落とそうとした。
 首を振っただけでは、落ちないようだ。
 上半身もねじってみる。
 それでも駄目だ。
 あぁ~、どうしよう。
 そう思っているとカマキリは、私の右腕に飛
び移った。
 うひゃぁ、そんなところに来るな。
 私は手を振り回した。
 カマキリは遠心力に抗しきれず、どこかに飛
んで行った。
 よしよし、これで一安心だ。
 それにしても私の首に飛びつくとは、何かの
嫌がらせなのか?
 このカマキリは、以前に大騒ぎした奴か。
 もう十分成虫のサイズだった。
 出来たら、余所様のお宅へ引っ越してくれな
いものだろうか。
 私は、どうもあなたたちカマキリが好きになれ
ないのだ。
 よろしくお願いします。